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ITF-2の電波を受信してみよう~~ITF-2って何?~~

ITF-2は,筑波大学「結」プロジェクトが開発した超小型人工衛星です.

ITF-2は筑波大学のキャッチフレーズである「Imagine The Future」の頭文字をとって,名づけました.

超小型人工衛星とは,その名のとおり,GPSや気象観測に用いられている一般的に馴染みの深い人工衛星と比較して,かなり小さな人工衛星です.日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが打ち上げている衛星のサイズは数 mにおよびますが,超小型人工衛星は一辺が数十 cm程度の立方体または直方体です.そのため,超小型人工衛星は「CubeSat」とも呼ばれます.ITF-2は一辺が約10 cmの立方体であり,質量は約1.4kgです.

図 1 ITF-2実機の外観

私たちは2014年5月から,およそ2年間の月日をかけて,ITF-2の開発および試験を行いました. ITF-2はH-IIBロケット6号機が打ち上げた「こうのとり」6号機(HTV6)に搭載され,2016年12月14日に,国際宇宙ステーション(ISS)に届けられました.その後,2017年1月16日にISSの「きぼう」日本実験棟より放出されました. 現在(2017年7月時点)においても,ITF-2は地球を周回しており,正常に動作をしています.

人工衛星は,宇宙空間で動作させるため地球上では実現できないような様々なことを行えます.衛星を開発する団体は,地球上から宇宙空間にある人工衛星に指令を出し,目標や目的を実現できるように衛星に意図した動作をさせます.これらの衛星を介して達成すべき目標や目的を人工衛星のミッションと呼びます.例として,天体の観測や新しい技術の実証等があります.これらのミッションを達成するために人工衛星は打ち上げられ,運用が行われています.超小型人工衛星であるITF-2についても同様に,私たちが考案した独自の3つのミッションがあります.ITF-2のミッションは以下のとおりです.

1.「結」ネットワークの構築

ITF-2は電波を用いて,様々なデータを送信しており,「結」ネットワークとは,そのITF-2が送信するデータを直接受信したという体験を共有する人々のネットワークです.普段の生活ではなかなか人と新たな接点を持つことは多くないと思われます.そこで,衛星信号受信という共通体験をきっかけとして,地球規模での交流の機会を獲得できるような衛星と衛星運用システムを提供することにより,「結」ネットワークを構築することが第一のミッションです.

図 2 「結」ネットワーク

ITF-2では,受信が容易なFM(周波数変調)を用いて,ITF-2の状態に関する情報を送信します.その情報は,太陽電池やバッテリの電圧値,バッテリや衛星表面の温度,アンテナの展開状況およびマイクロコンピュータの消費電流等です.また,FMはラジオでも用いられており,多くの人々に馴染みがあると思われます.ITF-2の情報は時々刻々と変化し,受信する毎に異なる情報を手に入れることができるという面白さを提供します.これにより,直接ITF-2の電波を受信する体験を通して,科学と宇宙への興味を引き立てることを目指しています.また,私たちがWebサイトで「ITF-2の電波を受信しました!」という受信者からの報告を受付け,衛星信号受信の体験を共有する人々が互いに知り合えるよう情報を提供します.

図 3 受信報告を手軽に行える受信報告フォーム

更に,公開デモンストレーションや出張授業先でメッセージを募集し,ITF-2に送信する取り組みも行います.このメッセージは軌道周回中に世界各国に向けて衛星から送信され,ITF-2を通したメッセージのやり取りも新たに人と人とのつながりが生まれるきっかけとなることを狙いとしています.

2.超小型アンテナの実証

ITF-2をはじめ超小型人工衛星は通信を行うためにアンテナが必要となります.アンテナは使用する電波の周波数または波長によって,その大きさが制限されてしまいます.そのため,超小型衛星の大きさに対してアンテナが長い場合があり,宇宙空間でアンテナを展開する方式を多用します.この方式はアンテナが正常に展開しない場合があり,通信するために必要となるアンテナの長さを得ることができず,衛星と通信することができなくなってしまうことが難点です.対して,鉄道の乗車カードやICタグ等で活用されているとても小さな電気機械システムに関する技術が発展しており,それを活用した機器に用いられる通信用アンテナは波長に比べて極めて小型化できることに加えて,展開する必要が無く,衛星本体の表面に搭載することで機能することができます.そのため,過酷な宇宙空間において,衛星の信頼性を向上することができます.この超小型アンテナを用いた電波送受信の実証を第二のミッションとしています.

図 4 ITF-2に搭載した超小型アンテナ

宇宙空間は過酷な環境であり,その環境下に置かれる人工衛星などの宇宙機に搭載する機器は,信頼性の観点から,すでに宇宙空間での実績があることが望ましいです.そのため,この超小型アンテナの動作実績を作ることができれば,今後の衛星開発において実績のあるアンテナの選択肢を増やすことを目指しています.

3.新型マイコンの実証

宇宙空間は,高エネルギーの粒子や電磁波などの放射線が絶え間なく飛び交っています.この放射線は宇宙放射線と呼ばれ,X線やγ線などの電磁波や陽子,中性子,α線,重粒子などの粒子線などがあげられます.これらの宇宙放射線が,人工衛星に搭載されている重要な機器に当たると,誤動作を起こす可能性があります.ITF-2含め超小型人工衛星はマイクロコンピュータにプログラムを組み込み,動作させていますが,このマイクロコンピュータは放射線に弱く,放射線に対する耐性が重要になります.今までの超小型人工衛星ではすでに宇宙空間で使用され、放射線耐性の面などから実績のあるマイコンが多く使用されてきましたが,近年,従来のマイコンに比べて放射線耐性が高いと言われている「新型マイコン」が登場しました.それを受けて,新型マイコンを宇宙空間で安定に使用できることを実証することが第三のミッションです.

図 5 新型マイコン (©TEXAS INSTRUMENTS)

このミッション以外のミッションに影響が生じないように,他のミッションと独立させ,宇宙空間で新型マイコンを動作させます.それにより,新型マイコンに生じる誤動作の頻度等からその放射線耐性を評価します.