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実施責任者からのご挨拶

筑波大学に衛星プロジェクトが誕生して早10年以上が経ちました。 2011年に始まった1号機ITF-1の開発、2014年の打ち上げそして不具合を経て、2014年9月採択の2号機ITF-2では学生メンバの精力的な活動により、ITF-2はISS放出1U衛星の稼働期間の世界記録を樹立するに至りました(当時)。その後のCOVID-19パンデミック下で大学内の活動が制限される中でも活動を継続し、東京都立大学との共同ミッションを立ち上げ、1U 衛星TSUKUTOをISS放出に向けて開発中です。プロジェクトに参加する学生メンバは、半導体デバイスの進歩、電子基板製造の迅速化と低価格化、3Dプリンタの高性能化といった10年超の衛星開発環境の進歩を肌で感じつつ、先輩達の模倣ではなく、オリジナリティを発揮して筑波大学の宇宙分野の歴史を作っていく実感を得ていることを光栄に思います。

工学系での「もの作り」教育の重要性は叫ばれて久しいですが、単に工作のスキルを身に付けるのであれば、趣味やサークル、あるいは、DIY教室で事が足ります。しかしながら、一人では達成できない大規模プロジェクトにおいては、様々なバックグラウンドや異なる経験値を持つメンバから構成されるチームでの設計・開発が必須になります。そこでは、個々人の中で無意識に獲得されたノウハウだけでは不十分であり、洗練された工学を学び、常にチームワークを意識することが重要になってきます。筑波大学では衛星プロジェクトを通して、スキルの獲得はもとより、社会で学生達が将来経験する大人数・長期のプロジェクトにおける「もの作り」を体系的に学べるよう、衛星の設計と開発を通して、JAXAや関連会社の衛星開発のプロの協力を仰ぎながら、俯瞰的視野を持つ学生の育成に努めます。

さらに、宇宙開発を考える上では、理学、医学、農学、芸術等の工学以外の分野との連携が重要であるという視点から、工学系の学生に限らず、宇宙に興味のある筑波大学の全学生にプロジェクトの門戸を開いています。今後もこの方針を継続し、幅広い宇宙開発のイノベーションの源泉になることを目指します。

また、宇宙規模での思考・発想のためには、国際力の涵養が極めて重要と考えており、Starlabプロジェクトで知られるオハイオ州立大学を始めとする海外大学に、学生メンバに奨学金を支給して派遣することを継続しており、今後も海外交流機会を積極的に拡大していきます。

衛星開発を通して研鑽を積んだポテンシャルの高い筑波大学の学生が、有人宇宙活動が一般的となるそう遠くない未来の宇宙関連分野を総合的に牽引する人材となって、世界で(宇宙で)活躍することを心より願っています。

筑波大学「結」プロジェクト実施責任者
システム情報系 教授
亀田 敏弘