ITF-2について
ITF-2は、筑波大学「結」プロジェクトが開発した超小型人工衛星です。
2014年9月に平成28年度上期打上げ機会「きぼう」放出超小型衛星に選定され、開発が進められてきました。
2016年度上半期に国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟へ打上げられ、「きぼう」日本実験棟から宇宙へ放出されました。
ITF-2は1号機であるITF-1の基本的な設計を引き継ぎながらも、電源を初めとした衛星全体の信頼性向上とミッション達成に向けたダウンリンク情報のバリエーション増加が行われており、ITF-1に比べてパワーアップした人工衛星です。

ITF-2 (結 2号)概要 #
- 名称 ITF-2
- 愛称 結 2号
- サイズ 1U(110.5×108.0×111.5mm)
- 質量 約1.39kg
- 衛星から地上への電波送信: 周波数430MHz帯、モールス、音声、AFSK
- 地上から衛星への電波送信: 周波数430MHz帯、144MHz帯、AFSK
- 軌道 高度400㎞
- 軌道傾斜角 51.6度
- 運用期間: 3か月~6か月
ITF-2ミッション #
1. 「結」ネットワークの構築 #
「結」ネットワークとは、本衛星から送られてきたデータを直接受信した体験を共有する人々のネットワークです。通常の生活では接点を持たない人と人が、衛星信号受信という共通体験をきっかけとして、地球規模での交流の機会を獲得できるような衛星と衛星運用システムを提供する予定です。こうした日々拡大していく人々の交流のためのネットワークを構築することが、「結」ネットワークの構築ミッションとなります。
ITF-2では、受信しやすいFMで衛星内部情報を送信します。世界中の人々に対して、時々刻々と変化する本衛星の情報を直接受信するという面白さを提供し、科学と宇宙への興味を引き立てることができると考えています。私達が管理するWebサイトで受信報告を受付け、衛星信号受信の体験を共有する人々が互いに知り合えるよう情報を提供する予定です。これらの情報を世界規模で活用することで、人と人とのつながりが世界規模で生まれると考えます。
これに加え、公開デモンストレーションや出張授業先でメッセージを募集し、ITF-2に送信する取り組みも行います。このメッセージは軌道周回時に世界各国で衛星から送信され、受信者はWebサイトに報告することができます。衛星を通したメッセージのやり取りをきっかけとして、新たに人と人とのつながりが生まれると考えます。
受信する #



受信報告をする #


2. 超小型アンテナの実証 #
RFIDを初めとするMEMS技術を活用したデバイスに用いられる通信用アンテナは波長に比べて極めて小型化されています。近い将来において、超小型衛星分野にこうしたMEMS技術を積極的に利用することにより、飛躍的に高機能かつ高信頼の衛星が実現できる可能性が考えられます。
その第一歩として、ITF-1ではアマチュア無線帯向けの超小型アンテナを、開発済みの315MHz帯向けのアンテナを基に製作して衛星に搭載し、アップリンクの受信の実証をミッションとしました。ITF-2ではさらに発展させ同様の周波数帯で超小型アンテナを用いた送受信の実証をミッションとします。
超小型アンテナを用いた送信ミッションでは、AFSK方式を用いたダウンリンクを行います。宇宙での実績が確認されれば、今後の衛星開発において実績のあるアンテナの選択肢の幅が広がることが期待できます。

3. 新型マイコンの実証 #
これまでの超小型人工衛星においては放射線耐性の面などから実績のあるPIC 16F877などが多くされています。近年、FRAM(Ferroelectric RAM 強誘電RAM)マイコンが市場に投入され、従来のフラッシュマイコンに比べて放射線耐性が高いと謳われています。こうした新しいデバイスとして、MSP430FR5739を宇宙空間で安定に使用できることを実証します。
実績の無いデバイスの場合は、ミッションの主要機器として単独で用いるにはリスクが高いため、本ミッション以外のミッションに影響を及ぼさないように使用します。また宇宙放射線によって引き起こるシングルイベントラッチアップ、アップセットの発生回数を記録しダウンリンクさせることで動作の安定性を定量的に評価します。MSP430FR5739とPIC 16F877そして教育等でも利用しやすいATMEGA2560-16AUに同じ動作をさせ、比較します。

各系概要 #
ITF-2の開発およびミッションの推進は7つの開発系とミッション推進チームによって行われています。
開発体制 #
- 電源系
- 通信系
- 地上局
- C&Dh系
- 熱系
- 構造系
- 姿勢制御系
- ミッション推進チーム