通信系
宇宙へと飛び立った人工衛星と地球上の私たちを繋いでくれる唯一の経路、それが無線通信。 「通信系」とは本来、人工衛星機のうち通信に関わる機能をもつ部分を指して言う言葉ですが、ここでは、人工衛星にとって重要項目である通信に関わるコンポーネントの開発、運用を行うチームを「通信系」と呼んでいます。 通信系では、通信に関わる部分全般の開発、運用を行っており、 具体的には、
- 通信機(回路基板)・アンテナの開発
- 地上局の構築・整備
- 軌道投入後の運用
などを行います。 また、現在開発中の機体「TSUKUTO」の通信においてはアマチュア無線帯を使用するため、そのための
- 周波数調整の事務手続き
- 関連するイベントへの参加
なども行っています。
通信機 #
電波に載せて送りたいデータは、そのままのかたちでは送ることができません。 送りたいデータを電波に載せて送信できる形式の電波に変換したり、逆に受信した電波を衛星内部で扱える形式の信号に変換する必要があります。 こういった処理などを行ってくれるのが通信機で、通信系ではこの役割をもつ基板の回路設計や、ICのプログラム作成を行ったりしています。
通信基盤の試作品
TSUKUTOにおいては、地上と衛星間の通信はモールス符号(CW)や2FSK、LoRaを使用して無線で行います。 LPWAの一種であるLoRaは、「結」プロジェクト内で初めて採用した変調方式であり、低電力で長距離の安定した通信を行うことが期待されます。 これと同時に、アマチュア無線界でのLoRaを使った通信の実証とその普及を目指しています。
アンテナ #
アンテナは、電波を使って情報を送ったり受け取ったりするための終端部品です。 TSUKUTOに搭載するモノポールアンテナは、一本の形状記憶ワイヤーからなるシンプルなアンテナで、周囲360度に広く電波を放射することができるのが特徴です。 TSUKUTOではこれを2本搭載し、打ち上げ時はこれらを曲げて収納、放出後は固定を外し展開させて使用します。 通信系では、これらが十分な性能を持っているかを試験などを通して確認し、設計を行います。
ただ、CubeSatのような超小型人工衛星に搭載できるアンテナは小さく、送受信できる信号のレベルも大きくないため、地球側に高性能なアンテナを用意しなければなりません。 「結」プロジェクトの本部が置かれている建物の屋上には、写真のような大きな八木アンテナを設置されており、これを使って人工衛星と通信を行います。 TSUKUTOの運用時にはこのアンテナを計2本設置し、縦波と横波(水平波と垂直波)のいずれも送受信できる体制を整える予定です。
本部屋上の地上局アンテナ
地上局 #
上でご紹介した八木アンテナは、「結」プロジェクト本部内の地上局に接続されており、PCからアンテナの向きを制御し、軌道上の人工衛星を追尾したり、コマンドの送信、テレメトリ(衛星から送られてきた衛星自身の情報)の解析を行ったりすることができます。 現在はPCと通信機を接続するインターフェースからシステムのGUIまで含めた総合的な環境の構築を行っています。
地上局に設置されたローテータコントローラ