熱・構造系

・系の概要

構造とは,名前の通り衛星の構造部分を指します.一言で表現するとすれば,衛星の中身(無線機や電子基板など)を収納する”箱”です.構造系は主に,各機器を固定して,打ち上げ時の衝撃・振動に耐えられるようにする役割を持っています.

・系の機能

"搭載機器の収納・固定"

構造系の主な機能は,衛星各機器の収納・固定です.ITF-2は,CubeSatと呼ばれる衛星のひとつで,一辺が10cm程度の立方体です.この狭い空間の中に,構造の強度,各機器のアクセス性や配線などをバランスよく考慮しながら,機器を収納・固定します.また,固定をすることで各機器を打ち上げ時の衝撃・振動から守ります.

・系の特徴

  1. "アルミ合金構体"

  2. "アンテナ展開機構"

  3. "ディプロイメントスイッチ"

  4. "アルミ合金構体"

ITF-2の構造系は,アルミ合金構体と,後述するアンテナ展開機構,ディプロイメントスイッチで構成されています.その中でもアルミ合金構体は,構造系の主となる部分で,無線機や電子基板などのほとんどの搭載機器の収納・固定をする役割を担っています.

アルミ合金構体と主な搭載機器

アルミ合金構体と搭載機器のCAD図

また,アルミ合金構体の材料には,A6061と呼ばれるアルミ合金を使用しています.A6061は比較的軽い割りに強度が高く,耐食性に優れています.

  1. "アンテナ展開機構"

アンテナ展開機構は,モノポールアンテナと呼ばれる細長いアンテナを展開する機構です.以下の動画でアンテナが展開する様子をご覧いただけます.

アンテナ展開の動画(数十秒程度)

アンテナ展開機構は,リン青銅で作られた細長いアンテナの復元力を利用して展開される仕組みです.アンテナは糸で拘束されており,その糸を溶断基板のニクロム線の熱によって切ります.アンテナの展開の有無は,展開検出スイッチによって検出されます.

アンテナ展開機構の各部品

アンテナ展開機構の各部品

アンテナ展開機構_ワイヤとニクロム線

アンテナ拘束時の図

  1. "ディプロイメントスイッチ"

ディプロイメントスイッチは,ITF-2が国際宇宙ステーションから宇宙空間へ放出されると同時にONとなるスイッチのことです.これは衛星が宇宙空間への放出前に誤って起動し,他の機器への電波障害などが発生することを防ぐために,JAXAから搭載することを要求されているものです.

ディプロイメントスイッチ搭載位置

ディプロイメントスイッチの搭載位置

ディプロイメントスイッチの収納・放出時

ディプロイメントスイッチの収納・放出時

ディプロイメントスイッチはシンプルな作りで,オムロン製のスイッチを衛星の角の支柱にねじ止めした構造になっています.ITF-2は宇宙へ放出されるまで,両側から押された状態で収納されており,これによってスイッチは押され,OFFの状態を保ちます(上図参照).宇宙へ放出された後,スイッチは解放されONの状態になります(上図参照).