電源系概要

・系の概要

電源系とは衛星の電力を供給する部分や電圧・電流の検知部分の作成と電力収支の管理を行うサブシステムです.

電源系システムブロック図

電源系が担当するシステムブロック図

・系の機能

  1. "衛星全体への電力供給"

  2. "センサ類の製作"

  3. "衛星の電力収支計算"

  4. "衛星全体への電力供給"

衛星の各機器を動作させるために,太陽電池と二次電池(リチウムイオン電池)から電力を供給します.衛星が日なたにいる時は太陽電池で発電した電気を衛星に送るだけでなく電池にも充電します.日かげに入ると太陽電池による発電ができないので,電池を使って衛星に電気を送ります.それらの特性を測定したり振動試験や真空試験を行ったりします.また各機器が正常に動作できるように安定した電圧を発生させるDC-DCコンバータや,バッテリの保護回路も担当しています.

日照日陰
  1. "センサ類の製作"

マイコンや無線機などに送られる電流を測定している電流センサ,およびそれに付随するスイッチ,自動リセット回路などの製作を担当しています.

  1. "衛星の電力収支計算"

衛星の運用モードを考える上で消費電力の計算は必要不可欠です.電流センサの測定値やカタログ値と動作電圧から各素子の電力を見積もり,送信時や受信時などパターンを分けて消費電力を計算します.さらに太陽電池やバッテリの特性試験の結果も踏まえて,それを元に衛星の電力収支を計算します。

・系の特徴

  1. "太陽電池"

  2. "バッテリ関連"

  3. "DC-DCコンバータ"

  4. "自動リセット回路"

  5. "太陽電池"

衛星に外部から電力を供給するために,衛星全面に2種類の太陽電池を貼っています.これにより太陽からの光を電力にして衛星内部の機器に供給したりバッテリを充電したりします.太陽電池が故障すると衛星への継続的な電力供給が行えなくなり,衛星が機能しなくなってしまいます.そのため,性能試験や振動試験,真空試験などで太陽電池が確実に動作するか確認することが非常に重要となります.

太陽電池(大)セル特性(±Y,±Z面搭載)

種別

Triple Junction GaAs Cell (ATI製)

平均効率

29.1[%]

最大電力時電圧

2379[mV]

最大電力時電流

505[mA]

平均開放電圧

2669[mV]

平均短絡電流

525[mA]

最大電力

1.2[W]

サイズ

40×80[mm]

太陽電池(小)セル特性(±X面搭載)

種別

宇宙用3接合太陽電池 (ATI製)

平均効率

28[%]

最大電力時電圧

2620[mV]

最大電力時電流

14.6[mA]

平均開放電圧

2620[mV]

平均短絡電流

16[mA]

最大電力

0.03[W]

サイズ

三角形 10×26.3[mm]

±Y面,±Z面の太陽電池配置図

±Y面,±Z面の太陽電池配置図

+X面の太陽電池配置図

+X面の太陽電池配置図

-X面の太陽電池配置図

-X面の太陽電池配置図

  1. "バッテリ関連"

衛星に搭載しているバッテリはLi-ionバッテリです.過度の充電や放電によりバッテリが液漏れを起こしたり爆発したりすると,衛星本体だけでなく,それを運搬したり放出したりする宇宙飛行士や関係者に悪影響を及ぼします.そこでバッテリに異常な負荷がかからないよう,充放電電圧ならびに放電電流を制御し,安全を確保する必要があります.そのための保護回路の回路設計や性能試験を行っています.  またバッテリ本体に対しても内部の故障が起こらないよう各試験から特性を評価し,実際に衛星に搭載するものを選定します.

  1. "DC-DCコンバータ"

衛星の機器を正常に動作させるためには安定した電源が必要となります.安定した電圧を発生させるために,DCDCコンバータの回路製作を行います.負荷に必要な電力や効率などを考慮し,回路や基板パターンの作成を行います.

DCDCコンバータ回路図

DCDCコンバータ(LT1308B)回路図

  1. "自動リセット回路"

マイコンの信頼性向上のため,ITF-2には,電流の増加を検知すると自動でリセットする回路を製作しました.

・系の用語集(テクニカルターム)

・DC-DCコンバータとは直流電圧を昇降圧させ一定電圧を発生させる回路のことです.

・振動試験とは対象となるものを振動装置に固定しその試験に必要な振動を与え,対象の性能を評価する試験です.

・真空試験とは対象となるものを内部を真空にする装置にいれ,その試験に必要なレベルの気圧まで下げ,対象の性能を評価する試験です.