・電源関係
電源周りのシステムブロック図
1. "太陽電池"
衛星に外部から電力を供給するために,衛星全面に2種類の太陽電池を貼っています.これにより太陽からの光を電力にして衛星内部の機器に供給したりバッテリを充電したりします.太陽電池が故障すると衛星への継続的な電力供給が行えなくなり,衛星が機能しなくなってしまいます.そのため,性能試験や振動試験,真空試験などで太陽電池が確実に動作するか確認することが非常に重要となります.
太陽電池(大)セル特性(±Y,±Z面搭載)
種別
Triple Junction GaAs Cell (ATI製)
平均効率
29.1[%]
最大電力時電圧
2379[mV]
最大電力時電流
505[mA]
平均開放電圧
2669[mV]
平均短絡電流
525[mA]
最大電力
1.2[W]
サイズ
40×80[mm]
太陽電池(小)セル特性(±X面搭載)
種別
宇宙用3接合太陽電池 (ATI製)
平均効率
28[%]
最大電力時電圧
2620[mV]
最大電力時電流
14.6[mA]
平均開放電圧
2620[mV]
平均短絡電流
16[mA]
最大電力
0.03[W]
サイズ
三角形 10×26.3[mm]
±Y面,±Z面の太陽電池配置図
+X面の太陽電池配置図
-X面の太陽電池配置図
2. "バッテリ関連"
衛星に搭載しているバッテリはLi-ionバッテリです.過度の充電や放電によりバッテリが液漏れを起こしたり爆発したりすると,衛星本体だけでなく,それを運搬したり放出したりする宇宙飛行士や関係者に悪影響を及ぼします.そこでバッテリに異常な負荷がかからないよう,充放電電圧ならびに放電電流を制御し,安全を確保する必要があります.そのための保護回路の回路設計や性能試験を行っています.
またバッテリ本体に対しても内部の故障が起こらないよう各試験から特性を評価し,実際に衛星に搭載するものを選定します.
衛星に搭載しているバッテリはLi-ionバッテリです.過度の充電や放電によりバッテリが液漏れを起こしたり爆発したりすると,衛星本体だけでなく,それを運搬したり放出したりする宇宙飛行士や関係者に悪影響を及ぼします.そこでバッテリに異常な負荷がかからないよう,充放電電圧ならびに放電電流を制御し,安全を確保する必要があります.そのための保護回路の回路設計や性能試験を行っています.
またバッテリ本体に対しても内部の故障が起こらないよう各試験から特性を評価し,実際に衛星に搭載するものを選定します.
3. "DC-DCコンバータ"
衛星の機器を正常に動作させるためには安定した電源が必要となります.安定した電圧を発生させるために,DCDCコンバータの回路製作を行います.負荷に必要な電力や効率などを考慮し,回路や基板パターンの作成を行います.
DCDCコンバータ(LT1308B)回路図
4. "電源マイコン"
電源マイコンは主に電源の監視と通信系統の電力制御を担当するコンポーネントです. PIC16F877という型番のマイコンを用いています.
5. "自動リセット回路"
マイコンの信頼性向上のため,ITF-2には,電流の増加を検知すると自動でリセットする回路を製作しました.
・構造関係
ITF-2の構造系は,アルミ合金構体と,後述するアンテナ展開機構,ディプロイメントスイッチで構成されています.
1. "アルミ合金構体"
アルミ合金構体は,構造系の主となる部分で,無線機や電子基板などのほとんどの搭載機器の収納・固定をする役割を担っています.
アルミ合金構体と搭載機器のCAD図
また,アルミ合金構体の材料には,A6061と呼ばれるアルミ合金を使用しています.A6061は比較的軽い割りに強度が高く,耐食性に優れています.
2. "アンテナ展開機構"
アンテナ展開機構は,モノポールアンテナと呼ばれる細長いアンテナを展開する機構です.以下の動画でアンテナが展開する様子をご覧いただけます.
アンテナ展開の動画(数十秒程度)
アンテナ展開機構は,リン青銅で作られた細長いアンテナの復元力を利用して展開される仕組みです.アンテナは糸で拘束されており,その糸を溶断基板のニクロム線の熱によって切ります.アンテナの展開の有無は,展開検出スイッチによって検出されます.
アンテナ展開機構の各部品
アンテナ拘束時の図
3. "ディプロイメントスイッチ"
ディプロイメントスイッチは,ITF-2が国際宇宙ステーションから宇宙空間へ放出されると同時にONとなるスイッチのことです.これは衛星が宇宙空間への放出前に誤って起動し,他の機器への電波障害などが発生することを防ぐために,JAXAから搭載することを要求されているものです.
ディプロイメントスイッチの搭載位置
ディプロイメントスイッチの収納・放出時
ディプロイメントスイッチはシンプルな作りで,オムロン製のスイッチを衛星の角の支柱にねじ止めした構造になっています.ITF-2は宇宙へ放出されるまで,両側から押された状態で収納されており,これによってスイッチは押され,OFFの状態を保ちます(上図参照).宇宙へ放出された後,スイッチは解放されONの状態になります(上図参照)
・通信関係
1. "1/4モノポールアンテナ"
人工衛星放出後に展開する機構です。
モノポールアンテナ
2."超小型アンテナ"
ITF-2のミッションのひとつです。「超小型アンテナの動作実証」
詳しくはこちらへ
超小型アンテナ
3."通信マイコン(PIC16F877)"
通信マイコンは主に通信系統Bの制御を行うコンポーネントです.電源PICと同じく、PIC16F877という型番のマイコンを用いています.
4."SATCOM HVU-301"
通信系統A, BともにSATCOM HVU-301を用いています. SATCOM HVU-301はITF-2に搭載されている無線機の細かい操作などを制御するためのサードパーティー製のモジュールです.
5."西無線研究所301A型"
430MHz帯の送信機・受信機、144MHz帯の受信機です。
・姿勢制御関係
1."永久磁石"
永久磁石にはネオジム磁石を用いており,上図のようにケースに入れて搭載されます.X軸を地磁気方向に合わせるため,永久磁石はX軸方向と平行になるよう配置されています.
永久磁石の搭載位置
2."磁気ダンパ"
磁気ダンパとは,導体が磁場中で運動した時に発生する誘導起電力によって,その導体が運動とは逆向きのローレンツ力を受けることを応用し,機械の振動減衰などに利用するものである. 磁気ダンパには,pcパーマロイと呼ばれる材料を用いており,サイズが1mm×1mm×70mmの細長い形状をしています.磁気ダンパは上図のように,衛星のX軸と垂直になるように配置しています.磁気ダンパには磁場中での運動を減衰させる効果があるため,このように磁気ダンパを配置することによって,衛星のX軸が地磁気方向に対して傾いた際,その振れを減衰させることができます.
磁気ダンパの搭載位置・メインマイコン
1."メインマイコン(ATMEGA2560-16AU)"
メインマイコンは主に通信系統Aの制御と新型マイコンの動作の監視を行うコンポーネントです. ATMEGA2560-16AUという型番のマイコンを用いています. これはArduino MEGA 2560に搭載されているマイコンと同じ型番です.
2."新型マイコン(MSP430FR5739)"
新型マイコンとは, ミッションの一つである「新型マイコンの動作実証」に用いるマイコンのことです. MSP430FR5739 という型番のマイコンが用いられています.